結論:社内情報は、分類・契約・権限・確認を整えてから使う
生成AIへ社内情報を入力してよいかは、情報の種類と利用するサービスの契約・設定によって変わります。公開情報以外を無条件に入力せず、利用目的を限定し、必要最小限にし、学習利用と保存条件を確認し、利用者ごとの権限と人の確認を置くことが基本です。パスワードやAPIキーなどの認証情報は入力しません。
| 公開情報 | 利用しやすい公開済みのWebページ、商品説明、一般向けFAQ。内容の正確性は人が確認する |
|---|---|
| 社内情報 | 承認済み環境のみ社内手順書や会議資料。利用目的、保存、学習利用、アクセス権を確認する |
| 機密情報 | 原則そのまま入力しない未公開の売上、契約、技術、営業秘密。匿名化や専用環境を個別に判断する |
| 認証・秘密情報 | 入力禁止パスワード、APIキー、秘密鍵、ワンタイムコード。発覚時は直ちに無効化する |
| 個人情報 | 法令・目的・契約を確認氏名、連絡先、予約・人事情報など。必要最小限とし、安易に入力しない |
安全に使うための7つの手順
ツールを契約する前に、目的と入力禁止情報から決めます。
STEP 1 利用目的と対象業務を一つに絞る
「社内情報をAIに入れる」ではなく、社内規程を検索する、問い合わせ回答の下書きを作るなど、目的と利用者を明確にします。目的が決まれば、必要な情報と不要な情報を分けられます。
STEP 2 情報を分類し、入力禁止を先に決める
公開、社内、機密、個人情報、認証情報に分けます。判断に迷う情報は入力しないことを基本にし、パスワード、APIキー、秘密鍵は例外なく禁止します。
STEP 3 サービスの契約と設定を確認する
入力データの学習利用、保存期間、削除方法、管理者機能、アクセスログ、外部委託先、データの保存場所を確認します。有料プランという名称だけで判断せず、実際の契約条件と設定を確認します。
STEP 4 データを必要最小限にする
氏名を顧客Aに置き換える、不要な列を削除する、文書全体ではなく必要部分だけを渡すなど、入力前に情報を減らします。目的に不要な個人情報や機密情報を混ぜません。
STEP 5 権限と参照範囲を分ける
RAGや社内検索では、部署、役職、案件、会社ごとの閲覧権限を検索時にも適用します。AIが接続されたからといって、全社員が全資料を検索できる状態にしません。
STEP 6 人の確認とログを残して試す
最初はAIの回答を自動送信・自動確定せず、人が根拠と内容を確認します。誰が、いつ、どの情報へアクセスし、何を実行したかを追える記録を残します。
STEP 7 事故対応と定期見直しを決める
誤入力や漏えいの疑いが起きたときの停止、認証情報の無効化、管理者への連絡、影響範囲の確認を決めます。サービスの規約や機能が変わるため、定期的に設定とルールを見直します。
生成AIサービスの選定で確認する6項目
| 学習利用 | 入力・出力を学習に使うか初期設定とオプトアウト条件まで確認 |
|---|---|
| 保存 | 期間と削除方法会話履歴、ログ、バックアップの扱いを確認 |
| 管理 | 組織アカウントSSO、多要素認証、退職者の停止、権限設定 |
| 監査 | 利用ログ利用者、日時、対象、操作を追跡できるか |
| 接続 | 外部サービス権限メール、Drive、DBなど必要最小限に限定 |
| 契約 | 規約と委託関係再委託先、保存場所、事故時の連絡条件も確認 |
「学習に使わない」という説明だけでは足りません。保存期間、削除、管理者権限、利用ログ、外部サービスへの接続範囲も確認します。個人情報保護委員会は、事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の範囲内かを確認し、本人同意なく個人データを入力する場合は、提供者が機械学習に利用しないことなどを十分確認するよう注意喚起しています。
RAGでも権限管理は必要
RAGは、社内文書を検索してAIの回答に使う仕組みです。文書をAIへ接続しただけでは安全になりません。
| 権限漏れ | 他部署・他社資料が出る検索前に利用者と文書の権限を照合する |
|---|---|
| 古い文書 | 廃止済みルールを回答正本、版、更新日、失効日を管理する |
| 根拠不明 | 回答だけを信じる文書名と該当箇所を回答に表示する |
| 文書内の悪意ある指示 | 想定外の命令を実行取得文書を命令ではなく参考情報として扱い、実行権限を分離する |
| 過大な連携権限 | 閲覧から更新・削除まで可能まず読み取り専用にし、重要操作は人が承認する |
特に複数店舗・複数会社で使うシステムでは、会社IDだけでなく、利用者がその文書を閲覧できるかを検索のたびに確認します。回答には文書名、版、更新日、該当箇所を表示し、根拠を人が確かめられる設計にします。
まず作る、1ページの社内ルール
最低限、①承認済みサービス、②利用できる業務、③入力禁止情報、④個人情報・機密情報の扱い、⑤人が確認する業務、⑥外部共有の禁止、⑦事故時の連絡先を一枚にまとめます。長い規程だけを配るより、日常の入力前に判断できる形にします。
AI導入全体の進め方は中小企業のAI導入は何から始める?、導入設計の問題はAI導入で失敗する会社の共通点7つで詳しく解説しています。
誤って社内情報を入力したときの対応
削除ボタンを押して終わりにせず、情報の種類と拡散範囲を確認します。
STEP 1 利用を止め、記録を保存する
該当する会話、利用者、時刻、入力内容、接続先を確認できるようにし、勝手に記録を消さず管理者へ連絡します。
STEP 2 認証情報なら直ちに無効化する
パスワード、APIキー、秘密鍵、トークンを入力した場合は、削除依頼だけに頼らず、対象を無効化して新しいものへ交換します。
STEP 3 保存・共有・学習の範囲を確認する
管理画面と契約条件を確認し、削除手続きやサービス提供者への連絡を行います。外部連携や共有リンクがあれば停止します。
STEP 4 影響と必要な報告を判断する
個人情報、営業秘密、取引先情報の種類と範囲を整理し、社内責任者や専門家と、本人・取引先・関係機関への連絡や報告の要否を判断します。
STEP 5 原因をルールと仕組みで直す
注意喚起だけで終わらせず、入力制限、権限、承認、研修、ログ監視を見直します。同じ誤入力が起きない仕組みに変更します。
公的ガイドラインで確認する
IPAは2026年公開の資料で、クラウドAIへ営業秘密を教えないこと、AIブラウザの社内用・社外用を分けること、RAGで異なる情報を不用意に混ぜないことなどを、利用者向けの最低限の対策として示しています。自社ルールは、サービスの宣伝文句だけでなく公的資料と照らして作ります。
参考:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」/IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」/経済産業省「AI事業者ガイドライン 第1.2版」
よくある質問
生成AIに顧客情報を入力してもよいですか?
確認なしに入力してはいけません。利用目的の範囲内か、本人同意や委託関係の整理が必要か、AI提供者が応答以外の目的や学習に使わないか、保存・削除・安全管理が適切かを確認します。可能なら匿名化し、必要最小限の項目だけを承認済み環境で扱います。
有料版の生成AIなら社内情報を安全に入力できますか?
有料かどうかだけでは判断できません。契約や設定によって、学習利用、保存期間、管理者機能、ログ、データ保存場所、外部連携権限が異なります。組織向け契約の具体的な条件と現在の設定を確認します。
RAGを使えば社内情報は漏れませんか?
RAGは安全性を自動的に保証しません。検索対象の混在、権限設定の不足、古い文書、文書内の悪意ある指示、過大な外部連携権限によるリスクがあります。利用者ごとのアクセス制御、出典表示、文書管理、操作承認が必要です。
最低限どのような社内ルールが必要ですか?
承認済みサービス、利用目的、入力禁止情報、個人情報・機密情報の扱い、人が確認する業務、外部共有の禁止、事故時の連絡先を最低限明記します。加えて管理者が権限とログを定期確認します。
誤ってAPIキーや社内情報を入力したらどうしますか?
すぐに管理者へ連絡し、利用停止と影響確認を行います。APIキーやパスワードは直ちに無効化・再発行します。履歴削除だけで安全になったと判断せず、保存・共有範囲を確認し、個人情報等を含む場合は必要な報告や通知を専門家と判断します。
社内情報を使うAIを、安全な業務として設計します
情報の分類、権限、RAG、既存システム連携、人への引き継ぎまで、実際の業務に合わせて小さく構築します。
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